以前から気になっているのは複式単線という呼び方。2本ロープなんだから「2線」あるいは「複線」なのでは?と思ったら現地に解説がありました。一見すると2本のロープが並行して循環しているように思えますが、実はロープは1本しか存在しないのだそうです。つまり、往路の左側を担ったロープは終点に着くと、向きを変えて復路の左側になって戻ります。戻ってくると、今度は往路の右側となって再び終点に向かいます。終点に着くと復路の右側で戻り、これでやっと一巡というわけです。ちょうど、1本の輪ゴムを指で1回くるっと巻いて二重にして使うイメージですね。
右と左の順序は実際とは違っているかも知れませんが、いずれにせよ「片側のロープだけ止まってしまう」などという初歩的でありながら、フニテルに於いては最悪の事態を招く事故は起き得ませんし、ロープの張り具合も自然と左右同じになるわけで、原理は単純だけど実に賢い仕組みです。複式単線に納得。なお海外では2本のロープを循環させる方式もあるそうです。(参考:たわたわのぺーじ)
講釈はこのくらいにして早速、乗り込みます。循環式なので、次々とゴンドラが着いては、折り返し用ループを通って発車していきます。ほぼ1分間隔です。
まず感想は「暑い」。冷房もなければ扇風機もない、窓もほとんど開かないので夏場はちょっと辛いですね。乗客は自分も含めて4人。10人くらいは余裕で乗れるゴンドラですが、4人でもこれですから満員時はゾッとします。雨上がりで日が射す午後という、典型的に蒸し暑い状況なので仕方なかったのかも知れませんが。
夏休み前の平日ということもあって、タイミングによっては貸し切り状態になります。乗客ゼロで発車していくものもあれば、定員乗車のものもあって短時間のうちでも乗客数に波があるようです。
途中駅・姥子(うばこ)ではホームに扇風機が設置してあって、ゴンドラ内を換気してくれます。会社側も、ゴンドラ内の暑さは百も承知なんでしょう。循環ロープは、桃源台〜姥子と姥子〜大湧谷(おおわくだに)でそれぞれ独立していますが、ゴンドラは直通運転します。
しかし次の大湧谷では乗換です。大湧谷でも、姥子と同じようにゴンドラを直通させることは、技術的には可能だったのでしょうが(しかも直通化工事を考慮した構内配置になっているように見えないこともない)、ここを境に輸送需要に差があるようで、フニテル化の際に分断され、必ず乗換となりました。実際、大湧谷〜早雲山(そううんざん)間は、桃源台〜姥子〜大湧谷間よりも大型のゴンドラが使用されています。
大湧谷の噴煙地を越える
大湧谷(おおわくだに)駅を出ると、すぐに噴煙地の上空を通過します。硫化水素、いわゆる「腐った玉子の匂い」というやつですが、そもそも腐った玉子の匂いなど私は嗅いだことがないのであくまで教科書知識です。「硫化水素の匂い」でいいと思うんですけどね。「玉子が腐ると、硫化水素の匂いがする」のほうがピンとくるんじゃ。
早雲山に着くやいなや、大湧谷までもう1往復乗ってしまったのはナイショです。ちなみに大湧谷〜早雲山間のゴンドラ内には、うちわが常備されていて少しは暑さを凌げます。うちわは持ち帰り不可。
フニテルのゴンドラ内でフニテルする人
備え付けのうちわ